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相談支援専門員のモニタリング報告書をAIで下書きする 本人の言葉を消さない照合の手順

相談支援専門員のモニタリング報告書をAIで下書きする 本人の言葉を消さない照合の手順

訪問の予定が続くと、モニタリング報告書を書く時間の確保が難しくなることがあります。生成AIで下書きを作れないかと考えている相談支援専門員の方もいるでしょう。

AIに頼めるのは、面接の後に書類を下書きする部分です。居宅等での面接、計画案の説明と同意、計画を変えるかどうかの判断は、これまでどおり相談支援専門員が本人と行います。下書きでは本人の言葉と決まっていないことを分けて残させ、面接メモと照らして確かめましょう。この記事では、架空の面接メモ1件を使って、その手順を紹介します。

AIに頼める工程と、頼まない工程

計画相談支援の進め方は、「指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準」(平成24年厚生労働省令第28号)の第15条に定められています。AIの使いどころを考える前に、人が行う工程を確かめておきます。

  • アセスメントでは、利用者の居宅等を訪問し、利用者と家族に面接する(第2項第7号)。
  • サービス等利用計画案の内容を説明し、文書で利用者等の同意を得る(第2項第10号)。
  • サービス担当者会議で、本人の生活に対する意向等を改めて確かめ、担当者の意見を求める(第2項第12号)。
  • モニタリングでは、定められた期間ごとに居宅等を訪問して面接し、その結果を記録する(第3項第2号)。

e-Gov法令検索「指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準」

面接をテレビ電話装置等で行える場面は限られています。令和6年度の報酬改定では、一部の加算の要件になっている訪問の一部について、テレビ電話装置等での面談も認められました。ただし、これらの加算では、月1回は対面での訪問が要件です。離島や過疎地などの特別地域では、条件を満たす場合に、アセスメントやモニタリングの面接をテレビ電話装置等で行える取扱いも設けられています。厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」PDF71〜72ページ

一方で、AIが手伝える作業もあります。

  • 面接中に取ったメモを、誰が何を言ったかで整理する。
  • モニタリング報告書の下書きを、事業所の様式の項目に沿って作る。
  • 次の面接で確かめたいことを一覧にする。

どれも、面接や関係者から得た情報を、出どころを分けて書類に整理する作業です。下書きを採用するかどうかは、相談支援専門員が決めます。

報告書を書くとき、時間がかかっているのは、文章をまとめるところでしょうか。それとも、誰が何を言ったかを思い出すところでしょうか。前者なら、AIの下書きを試す価値があります。後者なら、面接中に発言した人と言葉をそのまま書き留めるよう、メモの取り方を先に見直すほうが近道です。

架空の面接メモ1件で、報告書を下書きする

練習には、実在の利用者の情報を使わず、架空のメモを使います。以下は説明のために作った例です。

AIに渡す指示の例

以下は練習用の架空の面接メモです。モニタリング報告書の下書きを、次の四つに分けて作ってください。
1. 本人の言葉と様子:本人が話した言葉は、メモのとおりに書く。表情や動きも、メモの表現のまま書く。
2. 利用状況と、家族・事業所からの情報:誰からどのように聞いたかを付けて書く。
3. 相談支援専門員の見立て:メモに「見立て」と書かれたことだけを書く。
4. 決まっていないこと・次回確かめること
次のことを守ってください。
・メモにない気持ち、原因、評価を足さない。
・メモにある事実を省かない。
・計画を変えるかどうかは書かない。
・分からない箇所は、書き換えずに【確認】と書く。面接メモ(架空):
訪問先:自宅(本人、母が同席)
日中活動:生活介護に週3日通所中
本人「行くのはまあまあ。水曜は疲れる」
本人、水曜の話のときに少しうつむいた
母「もっと日数を増やしてほしい。家にいると昼夜が逆になる」
事業所の担当職員(訪問前に電話で聞き取り)「水曜は午後の作業で休憩を取ることが多い」
見立て:水曜の疲れの理由はまだ分からない。本人の考えを次回もう一度聞く
本人「増やすかどうかは、ちょっと考える」

指示文には、利用者の名前・障害名・住所・事業所名を入れていません。練習の段階では、これで下書きの質を確かめられます。

採用する下書き

四つの区分が次のように返れば、メモと一行ずつ見比べられます。これは説明のために作った想定出力で、特定のAIサービスで試した結果ではありません。

  • 本人の言葉と様子: 「行くのはまあまあ。水曜は疲れる」。水曜の話のときに少しうつむいた。「増やすかどうかは、ちょっと考える」。
  • 利用状況と、家族・事業所からの情報: 利用状況は生活介護に週3日通所中。母から「もっと日数を増やしてほしい。家にいると昼夜が逆になる」。事業所の担当職員から、訪問前の電話で「水曜は午後の作業で休憩を取ることが多い」。
  • 相談支援専門員の見立て: 水曜の疲れの理由はまだ分からない。本人の考えを次回もう一度聞く。
  • 決まっていないこと・次回確かめること: 通所日数を増やすかどうか(本人「ちょっと考える」)。水曜に疲れる理由。

採用しない下書き

次のような文が混ざっていたら、その部分は使いません。

  • 「本人は通所に満足している」: 「まあまあ」が「満足」に言い換えられています。
  • 「本人は通所日数を増やすことを希望している」: 母の希望が、本人の意向として書かれています。
  • 「水曜の作業内容を見直し、通所を週4日に増やす」: 決まっていない計画の変更が、決定のように書かれています。
  • 「水曜は疲れると話した」だけで終わる: うつむいた様子が消えています。

生成AIは文章を整えるときに、言葉をより一般的な表現へ置き換えたり、話の流れから結論を補ったりすることがあります。区分を分けて指示しても起こりうるので、照合の工程は省けません。

下書きをメモと照らし、計画を変えるかは本人と確かめる

下書きを受け取ったら、面接メモを横に置き、次の5点を確かめます。

  1. 本人の言葉が、メモと同じ言葉で残っているか。
  2. 家族や事業所から聞いたことに、誰からどのように聞いたかが付いているか。本人の意向と混ざっていないか。
  3. メモにない気持ち・原因・評価が足されていないか。
  4. 決まっていないことが、決まったことのように書かれていないか。
  5. 利用状況や本人の様子など、メモにある必要な事実が抜けていないか。

【確認】が付いた箇所や、指示を直しても同じ誤りが残る箇所は、メモを見ながら相談支援専門員が書き直します。

うつむいた様子のように、言葉にならない反応は、文章を短くまとめる過程で省かれることがあります。厚生労働省の「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン(第2版)」(令和8年9月)には、記録についての記述があります。本人の意思を明確に確かめることが難しい場面では、表情や行動などから読み取れる意思を記録し、積み重ねることが重要だとしています。客観的に整理や説明ができないような「様子」を記録に残すことも、重要な参考資料になるという考え方です。意思決定支援ガイドライン(第2版)冊子23ページ

同じページには、記録作成の負担を軽くするために、ICTツールの活用による業務の効率化を検討することが望ましいとも書かれています。AIの下書きを使う場合も、残すべき様子が消えていないかを確かめる工程は、人の手に残しておきます。

照合の結果、通所日数のように計画に関わる話が出ていても、報告書の下書きの段階では決めません。計画の変更を検討するときは、計画作成の手順の多くが準用されます(第15条第3項第3号)。アセスメント、サービス担当者会議での意向の確認、会議を踏まえた計画案の説明と文書での同意などです。この例なら、次の面接で本人が考えられるよう、水曜に疲れる理由や、ほかの過ごし方の選択肢を一緒に確かめるところから始めることが考えられます。

実際の面接メモを使う前に、事業所で決めること

架空メモで下書きの質を確かめたあと、実際の面接メモを使うかどうかは、事業所として決めます。

特定の人に障害があることを示す情報は、個人情報保護法でいう要配慮個人情報に当たります。個人情報保護委員会のガイドラインは、障害福祉サービスを受けていること、または過去に受けていたことを特定させる情報も、これに該当する例として挙げています。個人情報保護委員会 ガイドライン(通則編)2-3

計画相談支援の面接メモは、障害福祉サービスの利用を前提にした記録です。名前を消しただけで扱いが軽くなるとは考えず、入力するかどうかから検討します。

同委員会は、生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲かを十分に確認するよう注意喚起しています。あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを入力し、応答の出力以外の目的で扱われる場合は、法の規定に違反する可能性があるとも示しています。そのため、そうした入力をする場合は、提供事業者が機械学習に利用しないことなどを十分に確認する必要があります。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」

使えるかどうかは、次のような条件によって変わります。

  • 使うAIサービスの契約内容と設定(入力した情報の学習への利用、保存の場所と期間)
  • 入力する情報の範囲(名前や住所を除いても、残った情報から本人が分かるか)
  • 事業所の個人情報の取扱いルールと、利用者への説明の内容
  • 下書きと元のメモを保存・共有する場所

この記事では、個別の運用が法令に照らして適切かどうかは判断できません。迷う場合は、事業所の個人情報の担当者を通じて、専門家や関係機関に確認してください。使うと決めた場合も、どの情報をどのAIで扱うのかを、まず本人に分かる方法で説明しておくことをおすすめします。家族への説明や共有は、本人の意向と必要な範囲を確かめたうえで行います。

次のモニタリング1件で、照合の時間まで記録する

モニタリング報告書のAI下書きは、面接や関係者から得た情報を書類へ移す手間を軽くするためのものです。本人の言葉と様子、決まっていないことを分けて残させ、メモと照らして確かめる。計画を変えるかどうかは、本人と一緒に確かめる。まずは架空のメモで、この順番を試してみてください。

1件終えたら、次のことを書き留めておくと、続けるかどうかを判断しやすくなります。

  • 下書きを頼んでから報告書を確定するまでの時間(照合と修正を含む)
  • 直した箇所と、直した理由
  • 本人の言葉と様子が、メモのとおりに残ったか
  • 次の面接で確かめることが、はっきりしたか

架空メモではうまくいっても、実際の面接メモとなると、どのAIサービスをどこまで使ってよいかは一人では決められません。相談支援専門員によってメモの取り方が違えば、照合にかかる手間もそろわないままです。

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