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利用者向け説明資料のわかりやすい版をAIで作る 期限や相談先を落とさない確かめ方

利用者向け説明資料のわかりやすい版をAIで作る 期限や相談先を落とさない確かめ方

就労継続支援B型のサービス管理責任者が、新しく利用を始める人に渡す「利用のしおり」を、生成AIで読みやすく書き直しました。文は短くなり、難しい言葉も減りました。ところが、元のしおりにあった「事業所に言いにくい場合は、市の障害福祉の担当窓口にも相談できます」という一文が、書き直した版にはありませんでした(説明のために作った架空の場面です)。わかりやすくしたつもりの資料から、何が抜けていたのでしょうか。

利用者向けの説明資料のわかりやすい版は、言葉がやさしくなったかだけでなく、元の資料と同じ約束が伝わっているかで判断します。そのために、AIに頼む前に、元の資料から期限・できること・相談先などの約束を書き出しておきます。AIには元の文と約束の一覧を一緒に渡し、書き直した版はその一覧の側から照らします。本人には説明のあとで、本人に合った方法で伝わった内容を確かめ、伝わりにくかった所は資料と説明の側を直します。この記事では、架空のしおり4項目を使って、この流れをたどります。

説明資料を書き直すときは、約束の抜けに気をつける

説明資料には、本人が自分で決めるための約束が多く書かれています。いつ開いているか、休むときにどうするか、利用をやめたいときにどうなるか、困ったときに誰に話せるか。利用者が自分で選んだり決めたりするための材料です。

指定障害福祉サービスの運営基準は、居宅介護について、利用の申込みがあったときの説明を定めています。障害の特性に応じた適切な配慮をしつつ、重要事項を記した文書を交付して説明し、サービスの提供の開始について同意を得る、という内容です。この規定は、生活介護・就労継続支援B型・共同生活援助などにも準用されています。個別支援計画については、療養介護の規定(第58条)が、原案の内容を利用者やその家族に説明し、文書で利用者の同意を得ることを定めています。作成した計画は利用者に交付します。この規定も、生活介護・就労継続支援B型・共同生活援助などに準用されています。障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第9条・第58条(e-Gov法令検索)

重要事項を記した文書や個別支援計画の原案は、同意に関わる資料です。利用のしおりのような資料が重要事項を記した文書に当たるかは、事業所で正式な書面との関係を確かめてください。どちらの場合も、説明に使う資料で約束が抜けると、本人は抜けた約束を知らないまま同意したり、利用を続けたりすることになりかねません。

読みやすさを優先した書き直しでは、文を短くする途中で「ただし」の後ろが省かれたり、日にちが「年末年始」のような言い方にまとめられたりすることがあります。「できます」と書かれていたことが、「してください」に変わることもあります。どれも、一文だけを読むと自然な日本語です。

書き直す前に、元の資料から「残す約束」を書き出す

ここで使うのは、架空の就労継続支援B型の「利用のしおり」の一部です。実在の事業所の資料ではありません。

1 開所日と利用時間
開所日は月曜日から金曜日までとし、利用時間は午前9時30分から午後3時30分までとします。ただし、祝日及び12月29日から1月3日までは休所とします。2 欠席の連絡
欠席する場合は、原則として当日の午前9時までに事業所へ電話で連絡してください。体調が急に悪くなったときなど、連絡が遅れても差し支えありません。 3 利用の終了
利用者は、いつでも利用契約の解約を申し出ることができます。この場合、申し出た日から7日を経過した日に契約は終了します。
4 苦情・相談
サービスについての苦情や相談は、苦情受付担当者(サービス管理責任者)が受け付けます。事業所に言いにくい場合は、市の障害福祉の担当窓口にも相談できます(連絡先は別紙)。

この4項目から、書き直しても残す約束を、次の5種類に分けて書き出します。

  • 日時と数: 月曜日から金曜日・9時30分から15時30分・祝日は休み・12月29日から1月3日は休み・連絡の期限は9時・契約が終わるのは申し出た日から7日を経過した日
  • できること: いつでも利用をやめたいと申し出られる。事業所以外の窓口にも相談できる
  • お願い: 休むときは、9時までに電話で連絡する
  • ただし書き: 連絡の期限は「原則として」。急に体調が悪くなったときなどは、遅れてもよい
  • 相談先: 苦情受付担当者(サービス管理責任者)、市の障害福祉の担当窓口(連絡先は別紙)

書き出すのは、資料を作った職員か、説明を担当する職員です。分け方に迷う文は、「本人が自分で決められること」は「できること」、「本人に頼んでいること」は「お願い」と考えると分けやすくなります。白紙のまま「わかりやすくして」と頼むより、何を残すかが決まっていると、AIへの頼み方も、あとの確かめ方も具体的になります。

AIには、元の文と残す約束を一緒に渡す

頼み方の例

事業所が使ってよいと認めたAIサービスに、次のように頼む想定です。

次の「元の文」を、利用者の方が読む「わかりやすい版」に書き直してください。
読む人は大人です。子ども向けの言い方にしないでください。
守ってほしいこと:
・「残す約束」に書いたことは、すべて残す。言い方を変えても、意味は変えない。
・「できます」と書かれていることを、「してください」「しなければなりません」に変えない。反対も同じ。
・「ただし」「原則として」の内容を消さない。
・日にち、時刻、日数は、元の文と同じ数字で残す。「年末年始」「朝のうち」のような言い方にまとめない。
・元の文にないことを足さない。強める言葉も足さない。
・一つの文には、一つのことだけを書く。
・意味が分からない所は、書き直さずに【確認】と書く。
・最初に「これは利用のしおりのわかりやすい版です。正式な内容は利用のしおりに書いてあります。」と書く。残す約束:
(上の5種類の一覧を貼る)
元の文:
(しおりの4項目を貼る)

貼るのは、しおりのように利用者全員に配る資料の文だけです。貼る前に、利用者の名前や個別の事例が入っていないかを確かめ、入っていれば取り除きます。

一文に一つのことだけを書く・あいまいな言い方を避ける・二重否定を使わない。こうした書き方は、出入国在留管理庁と文化庁の「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」にも挙がっています。日本語に慣れていない外国人に向けた資料ですが、文の組み立て方の目安として参考になります。同じガイドラインは、作った文案を読み手の側の人に確かめてもらうことも、作り方の手順に入れています。出入国在留管理庁・文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」(PDF)

使えるわかりやすい版の例

次のように返ってくれば、約束の一覧と一行ずつ照らせます。説明のために作った想定の文で、実際のAIの出力ではありません。

これは利用のしおりのわかりやすい版です。正式な内容は利用のしおりに書いてあります。【事業所が開いている日と時間】
・月曜日から金曜日まで開いています。
・時間は、朝9時30分から午後3時30分までです。
・祝日は休みです。
・12月29日から1月3日までも休みです。 【休むとき】
・休む日は、原則として、その日の朝9時までに、事業所に電話をしてください。
・急に具合が悪くなったときなどは、9時を過ぎてから電話をしても大丈夫です。 【利用をやめたいとき】
・利用をやめたいときは、いつでも事業所に言うことができます。
・言った日から7日たった日に、契約が終わります。
【困ったことや、言いたいことがあるとき】
・苦情や相談は、苦情受付担当者のサービス管理責任者に伝えることができます。
・事業所に言いにくいときは、市の障害福祉の担当窓口にも相談できます。
・市の窓口の連絡先は、別の紙に書いてあります。

そのまま使えない書き直しの例

一方、次のような書き直しは、文としては自然でも使いません。これも説明のために作った想定の文です。

  • 「やめたいときは、7日前までに言ってください。」: いつでも申し出られるという「できること」が、期限つきの「お願い」に変わっています。7日の意味も、「申し出た日から7日を経過した日に終わる」から変わっています。
  • 「年末年始はお休みです。」: 12月29日から1月3日という日にちが、あいまいな言い方にまとめられています。
  • 「休むときは、朝9時までに電話しないといけません。」: 「原則として」と、遅れてもよい場合が消えています。言い方も、元の文より強くなっています。
  • 苦情・相談の項目が「困ったことは、サービス管理責任者に話してください。」だけになっている: 事業所以外の相談先が消えています。

確かめるときは、約束の一覧の側から照らす

この版で、本人は元のしおりと同じことができるでしょうか。確かめるときは、書き直した版を上から読むのではなく、約束の一覧の一行ずつについて、同じ意味で残っているかを探します。読みやすい文を上から読むと、抜けた一文には気づきにくいことがあるからです。確かめるのは、できれば、わかりやすい版を作った職員とは別の職員にします。

一行ずつ照らすときは、特に次の三つの形に気をつけます。

  1. できることとお願いの入れ替わり: 「申し出ることができます」が「言ってください」に、「相談できます」が「相談してください」に変わっていないか。
  2. ただし書きの消失: 「ただし」「原則として」「〜のときは」の後ろが消えて、例外のない決まりに見えていないか。
  3. 日にちと数のまとめ: 日付・時刻・日数が、「年末年始」「朝のうち」「1週間ほど」のような言い方に置き換わっていないか。

一覧にない言葉が足されていないかも見ます。「どんなときも」「すぐに」のような強める言葉や、元の資料にない注意書きです。

【確認】が付いた所や、頼み方を直しても同じ誤りが残る所は、AIの版を使わず、職員が元の資料から書き直します。

本人に合った方法で、伝わった内容を確かめる

職員が照らし終えたら、わかりやすい版を使って本人に説明します。説明の最後に「わかりましたか」と聞くと、「はい」と返ってくることがあります。ただ、その「はい」だけでは、約束が伝わったかどうかまでは分かりません。

厚生労働省の「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン(第2版)」(令和8年9月)も、本人が理解しているという反応をしていても、実際は十分に理解できていない場合があるとしています。そのうえで、形式的なうなずきなどだけで判断しないことを挙げています。確かめ方の例は、本人に合った方法で内容を言い換えてもらうことや、具体的な希望や行動として表れているかを見ることです。厚生労働省「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン(第2版)」(PDF)本文16ページ

しおりの例なら、説明のあとに、次のような問いから一つか二つを選んで聞きます。

  • 休むときは、いつまでに、どうやって知らせますか。
  • 利用をやめたくなったら、どうしますか。
  • 事業所に言いにくいことがあったら、どこに話せますか。

問いは、いつ・どうやって・どこに、で答えられる範囲に絞ります。本人の家庭の事情や体調など、人前で答えにくいことは聞きません。答え方は本人と一緒に選びます。自分の言葉で言い換える・わかりやすい版の該当する行を指さす・電話をかける場面を一緒にやってみる、など本人が伝えやすい方法で構いません。

答えが元の約束と違っていても、本人が分かっていないと決めつけません。これは本人を試す問いではなく、資料と説明が伝わったかを確かめる問いです。たとえば「どこに話せますか」で窓口が出てこなかったなら、窓口の項目を一番上に移す、連絡先の紙を一緒に渡す、といった直し方を考えます。伝わりにくかった所は、どの項目だったかを、次に資料を直すときのために残しておきます。

同じガイドラインは、意思形成に必要な情報を、本人の理解しやすい方法でその都度丁寧に説明することを求めています。そのうえで、本人の理解のペースに合わせて、必要な情報を繰り返し確認できるようにすることが望ましいとしています(同本文15ページ)。わかりやすい版は説明の場で使い終わりにせず、本人の手元に残して、あとから見返せるようにします。説明のあとで同じことを聞かれたら、手元の版の該当する行を一緒に見ます。

わかりやすい版は、正式な書面と一緒に渡し、一緒に直す

わかりやすい版は、正式な書面の代わりにはしません。両方を一緒に渡し、わかりやすい版の冒頭には「正式な内容は利用のしおりに書いてあります」と書いておきます。わかりやすい版だけで、運営基準の説明や同意の手続が足りるかどうかは、この記事では判断できません。迷う場合は、指定を受けている自治体の担当窓口に確かめてください。

照らし終えたわかりやすい版の終わりには、職員が作った日を書き足しておきます。正式な書面を改定したとき、たとえば開所時間や相談先の連絡先が変わったときは、同じ日にわかりやすい版も直します。直すときも、新しい書面から約束の一覧を作り直し、同じ手順で照らします。正式な書面だけが新しくなり、わかりやすい版が古いまま本人の手元に残ると、本人は古い約束を見続けることになるからです。

AIに入れる文にも気をつけます。しおりや重要事項説明書の一般的な部分は、利用者全員に配る文です。それでも、利用者の名前や個別の事例が書き込まれていることがあるため、入力する前に確かめます。一方、個別支援計画の本人向けの説明のように、一人一人の目標や支援の内容が書かれた資料には、利用者の情報が入ります。こうした資料にAIを使うかどうか、使う場合にどのサービスでどこまで入れてよいかは、事業所が条件を決めて認めた範囲に限ります。

個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプト(AIへの指示文)を生成AIサービスに入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめるよう注意を呼びかけています。あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを入力し、応答の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反する可能性があることも示しています。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(PDF)

次に配る説明資料の1項目から、約束を書き出してみる

わかりやすい版づくりは、言葉を言い換える作業より先に、何を残すかを決める作業から始まります。約束を書き出し、AIには元の文と一緒に渡し、一覧の側から照らす。本人に合った方法で確かめ、伝わりにくかった所は資料を直す。取りかかる順番は、次の三つです。

  1. 次に配る説明資料から1項目を選び(たとえば「利用をやめたいとき」)、日時と数・できること・お願い・ただし書き・相談先に分けて約束を書き出す。
  2. 元の文と約束の一覧をAIに渡してわかりやすい版を作り、作った職員とは別の職員が、一覧の一行ずつ同じ意味で残っているかを照らす。
  3. 本人に説明するときは問いを一つ用意し、本人に合った答え方で確かめて、伝わりにくかった項目を次に資料を直すときのために残す。

試したあとは、書き出し・AIへの依頼・照らし合わせ・書き直しにかかった合計の時間と、照らし合わせで見つかった約束の抜けや意味の変化を見て、ほかの項目にも広げるかを決めます。

説明資料が、しおり・重要事項説明書・計画の説明・料金の知らせと何種類もあると、約束の書き出し方や確かめる人が職員ごとに違ってきます。正式な書面を改定したときに、わかりやすい版を誰がいつ直すかが決まっていないと、古い版が本人の手元に残ることもあります。

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