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障害種別ごとのAI活用の勘所、情報の受け取り方と伝え方を本人と確かめる

障害種別ごとのAI活用の勘所、情報の受け取り方と伝え方を本人と確かめる

障害種別ごとのAI活用を紹介する記事には、「視覚障害のある人には読み上げ」「知的障害のある人にはやさしい言葉」といった組み合わせが並んでいることがあります。事業所でも、この通りに使い分ければよいのでしょうか。

種別の違いは、試す形の候補を考える手がかりになります。ただ、どの形が伝わるかは、種別だけでは決まりません。AIには案内や説明の形を変える下書きを頼み、元の案内との照合は職員が行い、どの形にするかは本人が選ぶ。この記事では、次に配る案内1枚でこの流れを試す方法を、架空の例で紹介します。

障害種別の例は、試す形の候補を広げるために使う

厚生労働省の「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン(第2版)」(令和8年9月)には、障害特性に応じた意思疎通の工夫が例として挙がっています。

  • 聴覚障害のある人: 手話通訳、要約筆記、筆談など
  • 視覚障害のある人: 点字、拡大文字、音声読み上げなど
  • 知的障害のある人など: やさしい言葉、図表、写真・絵カードを使ったわかりやすい情報提供など

同じページには、意思を形成し表現する方法は「障害特性にかかわらず一人ひとり異なる」とも書かれています。そのうえで、本人にとって理解しやすい方法を、共に探りながら支援することが重要だとしています。意思決定支援ガイドライン(第2版)冊子25ページ

この例を、AIで作れる形に置き換えると、候補は次のように広がります。

  • 話した内容を文字にする: 本人が希望する場合に、字幕や文字起こしの機能で説明を文字でも確かめられるようにする。
  • 聞いて分かる順に並べる: 読み上げても迷わないよう、表や矢印を使わずに、日時・場所・持ち物の順で文にする。
  • 短い文に区切る: 難しい言葉を言い換え、一文を短くした版を作る。

ここで、種別と形を一対一で結びつけないようにします。聴覚障害のある人への例に手話通訳・要約筆記・筆談が並んでいるように、同じ種別の中でも伝わりやすい方法は人によって違います。

候補から選ぶ前に、一つ思い出してください。その人は、前回の案内を受け取ったあと、どこで止まっていましたか。

  • 文字を読むところで止まっていたなら、聞いて分かる版を最初の候補にする。
  • 言葉の難しさや長さで止まっていたなら、短い文に区切った版を最初の候補にする。
  • 口頭の説明を聞き取るところで止まっていたなら、文字にした版を最初の候補にする。

ここで挙げた候補は、職員の見立てにすぎません。本人が伝えやすい方法で聞き、本人の言葉を優先します。

次に配る案内1枚を、AIで二つの形に下書きする

最初の題材には、利用者の個人情報を含まず、全員に配る案内が向いています。ここでは架空の外出行事の案内を使います。実在の事業所や利用者の情報ではなく、特定のAIサービスで試した結果でもありません。

AIに渡す指示の例

事業所で使用を認められたAIサービスに、次のように頼む想定です。

以下の「元の案内」だけを使い、二つの版を作ってください。
版A:読み上げて耳で聞いたときに分かる文章。表・記号・矢印を使わない。
版B:やさしい言葉で、一文を短く区切った文章。大人に向けた丁寧な言葉づかいにする。
次のことを守ってください。
・日時、集合場所と時刻、持ち物、申込の期限と方法を変えない。
・「参加するかどうかは自由」を残す。
・元の案内にないこと(天気、服装、注意事項など)を足さない。
・意味が分からない箇所は、書き換えずに【確認】と書く。元の案内:
秋の外出行事のお知らせ
日時:10月20日(火)10時〜12時
集合:1階の食堂に9時50分
行き先:近くの公園を散歩します
持ち物:飲み物、タオル
参加は自由です。参加する人は10月14日(水)までに担当職員に伝えてください。

指示には、利用者の名前や障害の説明を書き添えていません。形の条件だけを伝えれば、下書きは作れます。

採用する下書き、採用しない下書き

版Bが次のように返れば、元の案内と一行ずつ見比べられます。これは説明のために作った想定出力です。

  • 近くの公園を散歩します。
  • 日にちは、10月20日、火曜日です。
  • 時間は、10時から12時までです。
  • 9時50分に、1階の食堂に集まります。
  • 飲み物とタオルを持ってきてください。
  • 参加するかどうかは、自由です。行かないこともできます。
  • 行く人は、10月14日、水曜日までに、担当の職員に伝えてください。

一方、次のような下書きは採用しません。

  • 「みんなで公園に行きましょう」: 参加は自由という条件が消え、全員で参加する案内に読めます。
  • 「雨の日は中止です」: 元の案内にない決まりが足されています。
  • 「10時に食堂に集まります」: 集合時刻が、行事の開始時刻に置き換わっています。

生成AIは、読みやすさを優先して条件を省いたり、ありそうな情報を補ったりすることがあります。形を変える作業と、内容が同じかを確かめる作業は、分けておきましょう。

職員が元の案内と照合し、本人に選んでもらう

元の案内と二つの版を並べ、職員が次の4点を確かめます。できれば、下書きを作った職員とは別の人が見る運用をおすすめします。

  1. 日時・集合場所と時刻・持ち物・申込の期限と方法が、元の案内と同じか。
  2. 「参加は自由」が残っているか。参加を促す言い方になっていないか。
  3. 元の案内にない情報が増えていないか。
  4. 大人に向けた言葉づかいになっているか。やさしい言葉と、幼い言い回しは別のものです。

【確認】が付いた箇所や、指示を直しても同じ誤りが残る箇所は、その版を使いません。元の案内から、職員が書き直します。

照合が済んだら、本人に見てもらいます。元の案内と版A・版Bを渡し、版Aは読み上げて聞いてもらいます。読み上げは、職員が声に出しても、版Aの文章を端末の読み上げ機能で再生しても構いません。

そのうえで「どれが分かりやすかったですか」「まだ分からないところはありますか」と聞き、答えを待ちます。答え方も、話す・指さす・紙に丸を付けるなど、本人が伝えやすい方法を用意しておきます。

その場で決めなくても構いません。後で決める、誰かと一緒に考える、使ってみてから変えるといった選び方もあります。厚生労働省の同ガイドラインも、本人が決定を強いられず、決めない・保留する・変更することを含めて選択肢が閉じられていないことを重視しています。意思決定支援ガイドライン(第2版)冊子6ページ

どれも合わなければ、口頭で説明する、行き先の写真を見せるなど、人の方法に戻します。「元の紙のままでいい」という答えも、そのまま受け止めてください。

内閣府のリーフレットは、2024年4月1日から事業者による合理的配慮の提供が義務化されたことを説明しています。配慮の内容は、障害のある人と事業者の「建設的対話」を通じて共に検討することが重要だともしています。内閣府「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」

版を見比べて本人に選んでもらう手順は、このやり取りを案内づくりの中で行う方法の一つと考えられます。個別の対応が法令上十分かどうかは、この記事では判断できません。迷う場合は、所管の窓口や専門家に確認してください。

本人が選んだ形と理由は、次の案内づくりに生かせます。共有する職員の範囲と記録する場所は、事業所の個人情報の取扱いルールに沿って決めます。

AIに入力するのは案内文だけにする

特定の人について、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)などの心身の機能の障害があることを示す情報は、個人情報保護法でいう要配慮個人情報に当たります。個人情報保護委員会のガイドラインに、その範囲が説明されています。個人情報保護委員会 ガイドライン(通則編)2-3

同委員会は、生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲かを十分に確認するよう注意喚起しています。あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを入力し、応答の出力以外の目的で扱われる場合は、法の規定に違反する可能性があるとも示しています。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」

案内文に利用者の名前や個別の事情が入っているなら、入力する前に取り除きます。どのAIサービスを使ってよいかは、事業所の運用規程と、契約や設定の内容で確かめます。判断が難しい場合は、管理者や個人情報の担当者を通じて専門家に相談してください。

説明の音声を字幕や文字起こしの機能で文字にする場合も、同じ考え方で整理します。音声には、本人の発言や個別の事情が入ることがあります。本人への説明・使う機能・文字にした結果の保存と共有・元の説明との照合を、使う前に決めておきましょう。

本人が自分でAIや端末の機能を使う場合も、処理がどこで行われるかは確かめたい点です。例えば、Androidの「自動字幕起こし」は、端末で再生しているメディアや通話の音声に字幕を表示する機能です。音声と字幕を端末上で処理し、Googleに保存・送信しないとヘルプで説明されています。日本語への対応は一部の機種に限られ、話し声が明瞭で雑音の少ない環境で最適に動作するとされています。Google「自動字幕起こし」ヘルプ

使うかどうか、どの機能を使うかは本人が決めます。職員は、設定を一緒に確かめる、字幕や読み上げの誤りに気づいたときの確かめ方を話し合う、といった形で支えられます。

次の案内で、本人が選べる形を一つ増やす

障害種別ごとのAI活用は、一覧から道具を選ぶことより、本人がどこで止まっているかを確かめることから始まります。種別の例で候補を広げ、AIには形を変える下書きを頼み、職員が照合し、本人が選ぶ。この順番を、次に配る案内1枚で試してみてください。

試したあとは、次の点を振り返ります。

  • 下書き、照合、修正にかかった合計の時間
  • 照合で見つかった誤りの数と種類
  • 本人が選んだ形と、その理由
  • まだ伝わらなかったこと

利用者ごとに合う形が見えてきても、作り方や確かめ方が職員によって違う。どの資料までAIに入力してよいか、事業所として決まっていない。そうした状態なら、案内を作る流れと確認の分担を先にそろえておくと、次の案内で同じ迷いを繰り返さずに済みます。

案内の形を利用者ごとに変える取り組みを事業所の手順にしたい場合は、株式会社サクポートの無料相談をご利用ください。業務の流れの整理、AIと職員の役割分担、試作、手順書づくりまでを一緒に検討できます。ふだん配っている案内の種類と、作成や確認に関わる職員の人数が分かると、相談が進めやすくなります。利用者の情報をお送りいただく必要はありません。

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